高知県安芸市・西村さん

2002年4月築

人はどうしたら幸せに生きられるだろう。
手足を使い、身体を動かし、
一心不乱に汗を流せば、
答えはきっと、
歩んでいく道の先に、見えてくる。

設計ファイル

家の半分を土間が占め、家全体が一体感を持つ開放的な空間。

写真:内観

土佐湾を眼下に見下ろす高台に建てられた西村さんのOMの家。段差のある地形を生かし、道路側からは二階建ての家に見えますが、地階にRC造の倉庫があり、農作業や物置として利用しています。

1階はリビングと和室。大きな開口からはゆったりとした太平洋が眺められます。2階は階段を挟んで2部屋があり、1階、2階とも開口からは海の景色、山の景色が楽しめる上に、通風効果とOMの排熱効果で、夏でも暑さ知らずで過ごせるのだといいます。

2階の2部屋の上にはどちらにもロフトが設けられていて、たっぷりの収納が可能です。また西側のロフトからは星を見るために設けられた星見台に出ることができ、星を見るのが好きなご主人のお気に入りの場所になっています。

建物概要

  • 混構造2階建て(地下1階RC+地上2階木造)
  • 敷地面積:500平米
  • 延床面積:188平米(地下/64平米 1階/64平米 2階/60平米 ロフト/24平米)

写真:ご主人お気に入りの星見台ロフトの外に設けられたご主人お気に入りの星見台。


高知県安芸市・西村さんの家平面図(クリックで拡大)

写真:1階和室 写真:階段
【左】将来は寝室として利用する予定の1階和室。
【右】家のほぼ中央に設けられた階段。

家づくりと暮らし

消費する暮らしではなく、何かを生み出す暮らしがしたかった。

立秋を過ぎてもなお猛暑日が続く8月のある日、お訪ねした西村さんのお宅には、海からの爽やかな風が家中を吹き渡り、戸外とは別世界のようでした。西村さんのOMソーラーの家があるのは、高知市から東へおよそ40キロにある高知県安芸市。大河ドラマ「龍馬伝」に登場する三菱グループ創始者、岩崎弥太郎生誕の地として知られる町です。

写真:開墾した畑で無農薬野菜づくりを楽しむ西村さんご夫妻開墾した畑で無農薬野菜づくりを楽しむ西村さんご夫妻。

土佐湾を眼下に見下ろす高台の地に、西村さんがOMの家を建てたのは平成14年4月のこと。定年退職後の住まいとしてこの家を建てられました。自衛隊に勤務されていたご主人、章三郎さんが、定年後の生活設計について考え始めたのは、数年後に定年を控えた姫路の官舎にお住まいの時でした。

生まれ故郷の高知に戻り、「自分で食べるぐらいの野菜はつくって暮らしたい」と考えていた西村さん。「田舎育ちで、母親が野菜づくりをしていました」という章三郎さんは、趣味の延長ではなく、生活の糧としての野菜づくりがしたかったといいます。さらに「消費するだけの暮らしではなく、何かを生み出す暮らしがしたかった。そしてその暮らしを支えるための家は、どういう家がいいのかを考えていた」、という西村さんの目に留まったのが、OMソーラー見学会の広告でした。

入隊前に林業関係のお仕事を経験されていたこともあって、住むなら最初から「木の家」と決めていた西村さん。見学したOMの家は木の家で、しかも、太陽熱や風の力を利用して暖房、採涼するというもの。「エアコンが苦手」という西村さんにとって、体感的にも、また光熱費の節約という点でも理想の家でした。

写真:片流れ屋根の西村さんのOMの家。片流れ屋根の西村さんのOMの家。外壁の塗装もすべてご自身の手で塗られた。

OMの家を知ってからは、「他の選択は考えなかった」と言い切るほどOMの家に魅了された西村さん。パンフレットに掲載されていたOMソーラーの家の間取り図を参考に、じっくりとプランを練り上げ、高知市のOM会員工務店を、「平成14年に高知に戻るので、OMの家を建ててほしい」と訪ねた際には、実施プランのベースになるほどしっかりとしたプランが出来上がっていたといいます。

土地探しも自分たちの手で行い、宅地売り出し中のノボリを見つけて出会ったのが、土佐湾を臨む高台のこの地でした。「山奥で育ったので、海が見える場所が憧れだった」という章三郎さんにとって、まさに理想の土地でした。

理想の土地に、理想のOMソーラーの家を建てることになった西村さん。「工務店さんに一番にお願いしたことは、海が見えるよう、風が通るよう窓を大きくしてほしいということでした。でもここまで上手に、思い切った大きな窓になるとは思ってもいませんでした」というのは奥様の朝子さん。昼間は海側から、夜は山側から吹き渡る風と、「見ているだけで心がゆったりとしてくる」という海の景色とで、大満足なのだといいます。

家はそこでどう暮らすかによって生きてくるもの。手入れ次第で何代も持ちます。

写真:念願の海を眺める暮らし「見ているだけで心がゆったりとしてくる」と念願の海を眺める暮らしを満喫。
写真:石垣畑から掘り出した石を使ってつくり上げた石垣。

OMソーラーシステムだけでなく、太陽光発電や雨水利用と、自然の恵みを暮らしの中に積極的に取り入れた西村さんのOMの家。地元高知県産の杉材をふんだんに使い、片流れ屋根の1階はリビングと和室、2階は階段を挟んで2部屋、地階はRC造の倉庫と、道路側からは2階建て、南側から見ると地階を含めた三層構造の家になっています。

さらに平成14年の竣工後も、敷地の中では地形の段差を生かした畑づくり、駐車場づくり、石垣づくりと、西村さんの手による作業が着々と進められています。

「家はつくったら終わりではなく、そこでどう暮らすかによって家が生きてきます」という章三郎さんは、地階を掘った時に出た石を使い、石垣や駐車場をご自分の手でつくり上げました。「駐車場はコンクリートでやりませんかと言われましたが、コンクリートだと壊した時に捨てるのが大変です。一人でやりましたので3年ほどかかりましたが、この敷地から出た石を使ってつくりました。」

畑で無農薬野菜をつくり、掘り出した石を使って敷地の整備をし、毎日忙しい日々を過ごしている西村さんは、ご自分の家のことだけでなく、玄米菜食の推進運動や、共生森の会の会長、さらに安芸市の観光ボランティアとして、岩崎弥太郎生家の観光ガイドもされています。

写真:タンク雨水もタンクに貯めて畑の水遣りに利用している。

「弥太郎さんの生家は移築してから215年ほど経っていますが、まだまだ上手に管理していけばあと100年は持ちます。OMの家も隠し事のない家で、職人さんが手を抜かず丁寧につくっていますので、管理次第で何代も持つ家だと思います。」

分業化が進み、暮らしのほとんどを人の手によって賄われている現代社会。煩わしいから、時間がないからと、自分の手を掛けないことによって愛着を失い、大切にする心までもが失われつつあります。家も、「家づくりのプロである職人さんがつくってそれで終わりではなく、人が住んで初めて家としての真価が問われるのです」という西村さんのことばに、家までも消費財と考える現代人の驕りを指摘された思いがします。

写真:リビングの開口「これほど大きくなるとは」と驚いたというリビングの開口。

「OMのこの家が好きです。この家は私にとって城なのです。その城を守るため、長く活かすために、自分の手でできることがあるというのが嬉しい。畑仕事も米や塩までつくることはできませんが、自分の手に負えないことは人の手を借りながら、できることはなるべく自分の手でやりたい。OMという環境にいい家で、いかにエコで幸せに暮らせるかという実践をしたいと思っているのです」という西村さんご夫妻。職業人としての役割を果たし終えた今も、社会に暮らす一員として、額に汗し、つくる喜びを噛みしめながら、元気一杯人生を楽しんでいます。