宮崎県宮崎市・田坂さん
2000年5月築
季節を感じ、時を重ねるごとに、味わいの増す家でありたい。
設計ファイル
収納を集中させて広さを確保。たくさんの人を受け入れるゆとりのある空間に。

県産材の杉、津江杉、桧、珪藻土の自然素材をたくさん使った田坂さんの家は、「月日とともに味わいの出る家」というコンセプトをもとにつくられています。また、友人が大勢集まった時にゆっくりとくつろげる空間であること、掃除が簡単であるように、放りこんでしまえる収納であること、使用しない時はなるべく電気製品が隠れていることなども、基本として考えられています。そして、土足で出入りできる玄関つき当たりの収納室は靴などを中心に、二階の風通しのよいクローゼットは衣服類をと、集中した収納場所が設けられています。
キッチンは複数名でも動きやすいよう、たっぷりとした広さを確保。東側には奥様のための家事コーナーもつくられています。さらに、リビング東側に設けられた土間のテラスは、居間とキッチンの両方から出入りできるようにしました。窓に網戸をはめて、開け放ちながら七輪で酒の肴を焼くには、もってこいの場所となっているそうです。
建物概要
- 木造2階建
- 敷地面積:258.93m2
- 延床面積:154.78m2(1階:106.04m2、2階:48.74m2)

宮崎県宮崎市・田坂さんの家・平面図(クリックで拡大:39KB)

【左】洗面所の主役は、50年以上の時を重ねてきた骨董品の照明器具。右側のドアの中に洗濯機が収納されている。
【中】坪庭が楽しめるお風呂場。壁には桧材を用いた。
【右】ゆったりとしたトイレ。壁の美しいテクスチャーに職人の技がひかる。
家づくりと暮らし
日照豊かな宮崎で、せっかくの太陽の恵みを使わない手はない
旧くからの住宅地の一角にある、田坂さんのOMソーラーの家。宮崎の太陽をたっぷりと浴びて。
宮崎市にお住まいの、外科医・田坂さんと、元宮崎放送局のレポーターをされていた奥様。「夫婦二人だけだから広い部屋はいらないし、一生賃貸でいい」と言っていた田坂さんに対し、「家を建てたいとずっと思い続けてきた」という奥様が、せっせとモデルルームに足を運び家づくりを研究する、その中で出会ったのが、OMソーラーの家でした。
「宮崎は日照の豊かなところですから、せっかくの太陽の恵みを使わない手はないと思って」と、OMソーラーに興味をもった奥様は、「今、こういう家があるんだよ」とOMソーラーのビデオやパンフレットを旦那さんに渡しました。夜中、一人でこっそりと資料に目を通した田坂さんは、翌日一言、「OMソーラーのしくみは、利にかなっているな」──「私よりもずっと飲み込みが早いわけなんです」と奥様。こうして、田坂さんご夫婦の家づくりは始まったのでした。
奥様は家づくりにあたり、「月日とともに味わいの出る家にしたい」、そして、「十五夜みたいな季節の行事を大切にした季節感のある暮らしがしたい」という思いを抱いていました。そのルーツを紐解けば、奥様のおばあさんの家につながります。「都城市にあって薩摩藩の武士の家だったんです。南九州特有の武家屋敷で、お盆やお正月、夏の膳に冬の膳と、何かあると親戚みんなが集まる家でした」
せっかく日本に生まれたのだから、美しい四季を大切にしたい。強制的に環境をコントロールする生活ではなく、季節を心から楽しみたい。その思いは、田坂さんの仕事の関係で三年間ほどアメリカで暮らしたという経験を通じ、さらに強くなったそうです。
こうした思いをもとに建てられた田坂さんのOMソーラーの家は、地元宮崎県産の杉や、津江杉、桧、珪藻土の土壁など、時を重ねるごとに風合いを増す自然素材がたくさん使われています。そして、家のあちこちには骨董好きの奥様が長年かけて集めてこられた品々が、ずっと以前からそこにあったように、生き生きとした存在感を放っています。
おばあさんの家の思い出・海外生活を通して学んだこと・人の技・手の温もり、想いを大切にする奥様の感性によって集められた時を重ねた品々・現在の二人のライフスタイル──この家は、住まい手自身の生き方そのものが、映し出された家なのです。

【左】地元のテレビ番組で紹介されたこともあるという庭は、緑まぶしく、実に表情ゆたか。
【右】一階の和室の縁側で語り合うご夫妻。和の風情の庭を前に、ゆったりと流れる時間。
素直に『いいね』と言ってくれた主人の言葉が、すごくうれしかった
宮崎県産材の杉や珪藻土など、時とともに風合いを増す自然素材がたくさん使われている田坂さんの家。落ち着きある吹き抜けの居間。
建築中は「午前も午後もほぼ毎日、ここに“出勤”していた」という奥様。長い間の夢がカタチになっていくうれしさもありましたが、加えて、職人さんの仕事に、「上手ですね、すごいですね」と感心することしきりで、「日々感動でした」と言います。職人さんの技の中に、人の手による温かみや本物の力強さといった、骨董品とどこか共通するものを敏感に受け止めていたのでしょうか。
一方、家が完成するまでに3回ほどしか見ていないという旦那さん。「引き渡し前、主人が見に来たんです。そうしたら『僕の勉強部屋が思ったより狭いね』などと言いながらも、『へぇ、これが和室なの、これがリビングか』と、少年のように目を輝かせて、素直に『いいね』と言ってくれました。すごく嬉しかった」と奥様。
季節や自然を感じたいという思いは、二階の寝室の窓を丸くして障子をはめ、一階のリビングから見上げると、障子越しの寝室の明かりがまるで満月のように見えるという心憎い演出も生みました。田坂さんの最もお気に入りの場所は、リビングの東側に設けられた土間のテラスです。「ここでビールを飲んで、酔いつぶれたらリビングの床に寝転がるんです」と説明してくれた田坂さんは、本当にうれしそう。
二階を案内していただいた時も、勉強部屋の上のロフトを指差して「ここが僕の隠れ場所なんです」──あれあれ? 家づくりには関心がなったのでは……いえいえ、きっとそれは、決して関心がなかったのではなく、奥様の考え方・生き方のセンスに、全幅の信頼を寄せて家づくりを任せていたというのが、本当なのでしょう。
この夏は、試みに設置してみたクールチューブの効果も手応え十分だったという田坂さんの家。今年、初めて冬を迎えるこのOMソーラーの家では、床下に蓄えられた宮崎の太陽の恵みが、心地よい酔いにリビングに寝転ぶ田坂さんを、ほんわかやさしく包んでくれるはず。その時には「利にかなったしくみ」の実際を実感されるとともに、あらためて、奥様への感謝気持ちを心に浮かべることでしょう。

【左】奥様が集めた骨董品が出迎えてくれる玄関ホール。おばあさんの家もそうだったように、玄関たたきに、小さな丸石を埋め込んで。
【右】6畳と3畳の続き間の和室は、お客様用。その端正な佇まいに、着物展示会に使わせてほしいと頼まれたことも。

【左】満月をイメージした寝室の窓。障子越しのほんのりとにじむ明かりが、夜の室内を演出。
【右】衣類はクローゼットで集中収納、すっきりとした寝室に。藍染めの布のベッドカバーは、奥様のお手製。

















