特別企画:今こそ「エコハウス」を考える
「エコハウス」という言葉をインターネットで検索すると、企業・自治体・個人・その他各種団体から書籍のタイトルまで、実に様々な場面に登場しています。しかし、「エコハウスの定義は?」となると曖昧です。そこで、今回は、「エコハウス」について、あらためて考えたいと思います。
第一部では、雑誌『日経アーキテクチュア』にて連載「エコハウスのウソ」を執筆され、現在、OMソーラーの家の性能検証をお願いしている東京大学大学院准教授の前真之氏に、「本当のエコハウスとは?」「OMソーラーに対する期待」を。第二部では国土交通省の研究機関である独立行政法人・建築研究所の研究員のお二人から、「OMソーラーの評価」について伺っています。(文/2011年12月現在)
空気集熱式ソーラーシステムの省エネルギー効果の評価に関する研究 第1報(PDF/442kb)
空気集熱式ソーラーシステムの省エネルギー効果の評価に関する研究 第2報(PDF/318kb)
第一部「エコハウス」とはなにか
東京大学大学院准教授 前真之
第一部では、長年住宅のエネルギー消費に関する研究を行っている東京大学大学院 准教授の前真之氏へのインタビュー記事をご紹介します。
本物のエコハウスは見よう見まねではできない

前真之氏。長年住宅のエネルギー消費に関する研究を行っている。
住宅のエネルギーについて研究する中で、いわゆる「エコハウス」をたくさん見てきましたが、本当に省エネ・省CO2と快適性を両立できているか疑問を持つようになりました。エコハウスとは本来、環境への配慮はもちろんのこと、デザインや快適性をふくめて総合的に解決することが求められるので、非常にハードルが高いものです。「良さげ」な家は見よう見まねでできますが、「良い」家はしっかり考えないとできないのです。
一方で、建築環境技術の分野において今後、思いもつかなかったような新しい論理や技術がポンポン出てくるとはとても思えません。既に必要な論理は完成されている。後は、それをいかに分かりやすく伝えるかが課題だと考えています。
私自身は純粋な研究者として建築研究所に勤務し住宅の給湯を専門に研究してきましたが、大学に戻り教員として学生を教えるようになってから、「伝え方」を強く意識するようになりました。彼らは「設備」、「CO2」、「メガジュール」といった専門性の高い内容には全く興味をもたないのに、設計の課題になると一転イキイキする(笑)。学生と一緒に学び研究を進めていくためには、なによりまず彼らに関心を持ってもらう必要があります。さらに言えば、彼らが関心を持つような伝え方ができれば、実際に家づくりにかかわる建築家や工務店、実際に家を購入してそこに暮らすことになる一般の人たちにも関心を持ってもらうことになる。それは「しっかり考えられ、しっかりつくられたエコハウス」が普及することになる一助になるのではと考えました。
物理の原則を理解することがエコな設計への近道
調査のためにエコハウスを訪問すると、それを管理している人がこの「エコハウス」をどのように説明したらよいのか、本当にエコなのか悩んでいる場合が少なくありません。自分で住んでいても、不便で使いにくいし、快適に感じられない。特に、冬の寒さをおろそかにしている物件は非常に多いのです。
例えば、「大きな窓」。これがエコハウスの必須アイテムという設計者もたくさんいます。たしかに大きな窓からは日射がたくさん入り、冬でも昼間には太陽の熱で室温を暖めることができます。しか し、室温は高ければ良いというものではありません。天気の良い日には30度を楽に超えてしまうので、暑くてしかたないわけです。だから窓を開けて、せっかくの熱を捨てる羽目になってしまう。夜には逆に、大きな窓からの熱ロスが災いして、室温が低くなってしまうのです。
もう一つ間違いの多い例として、薪や木質ペレットを燃料とするストーブがあります。確かにバイオマスを利用するので森林資源を活用でき、炎の醸し出す雰囲気もいい。しかしきちんとした機種を選ばないと、燃焼のために室内の空気を吸い込んで、煙突から熱い軽い煙として放出してしまいます。放出するだけでは室内の空気がなくなってしまいますから、その分だけ下から冷たく重い外気が侵入してくることになります。つまり、「暖房するほど足元が寒くなる」。ストーブの前だけが暖かく、足元の床は侵入してきた冷気で冷え切ってしまうわけです。サーモカメラで撮影すると、その温度ムラが見事にカラフルな画像となって現れます。このように薪ストーブ一つとっても設計は難しいし、使いこなすのも簡単ではないのです。薪ストーブほど極端でないにしても、断熱気密が不十分な家では、エアコンを使用する場合でも、足元が寒い現象になります。
こういったケースは、環境技術を正しく認識することなく、思い込みに基づいて設計してしまっていることが原因だと思います。エコが単なる「様式」になってしまっているのです。つくる側はそれで満足かもしれませんが、実際に日々そこで暮らす人にとってはたまったものではありません。エコは、人間都合で決められる単なる様式や流行ではない。熱や空気の流れを司る物理的な原則を決して無視してはいけないのです。
建築の構造も同様に物理的な原則に法って考えられていますが、地震のような非日常が来ないとその真価は分かりません。それに対して、建築環境の技術は日々の生活で真贋がすぐに感じられるわけですから、本当はウソがつけないはず。なのに、なぜかウソがはびこっています。もっと、真剣で活発な議論がされてしかるべきです。
太陽を補うためにエネルギーが必要に
そもそもなぜ住宅においてエネルギーを必要とするかと言えば、太陽では得られないエネルギーを補うためです。例外は冷房だけ。冷房は昼間に、太陽エネルギーが有り余っている時ほど必要になります。冷房以外の用途を考えると、例えば電気の照明は夜に太陽の光がないから必要になります。だから、夜にあまりエネルギーを使わなくていい家、暮らし方を考えることも大切。つまり、夜はさっさと寝ればいいのです(笑)。
冬は太陽の日射が少なく寒いので、様々な手段で他の熱を得る必要があります。そして、せっかくの熱を家が逃がさないようにすることが重要。つまり、高断熱・高気密といった王道的な省エネ住宅が基本となるのです。似た言葉にゼロエネ・ゼロCO2ハウスがあります。しかし「CO2」といわれても、一般の人はなかなかピンとこないし、CO2を削減するために家を建てる人はいません。家は住むところですから、まずは生活を支えるためにしっかりとした家をつくることが重要です。震災の後の停電でも、高断熱の家では暖房が無くても凍えずに済んだ、太陽熱温水器でお湯が使えて助かったという声を聞きました。このように省エネは住宅の質を上げて、生活水準を支える家づくりの「王道」です。
太陽エネルギーは電気と熱どちらで使うべきか
電気というエネルギーは便利なので、エコや省エネを考える上で太陽光発電に注目が集まるのは当然です。太陽光発電については、敷地や建物の条件、そして予算といった条件が揃った場合は、しっかり太陽光発電を載せればいいと思います。載せるならちゃんと載せて、高価な太陽光パネルに最大限働いてもらえる設計にしましょう。逆に、条件が悪いなら無理に載せずに、他の自然エネルギー利用を考えるのが賢明です。
同じ太陽エネルギーを利用する技術として、太陽熱利用があります。太陽熱利用は太陽光発電と比較してエネルギー効率が高いことを主張していますが、単純にエネルギー効率の比較だけで優劣を競うのは、あまり賢明な方法とは思いません。注目すべきはそれぞれの特性であり、特性に合った利用方法を採用することが合理的です。技術は「良い・悪い」の二元論で単純に論じるべきではないのです。
右の表を見れば、熱は住宅で使うのが合理的ということがわかります。一方、電気は、広大な敷地に計画するメガソーラーの考え方が理にかなっていることがわかります。繰り返しますが、「良い・悪い」ではなくて特性の違いですので、ケースバイケースで使い分けることが大切です。
ちなみに、冷房についてはいろいろ深刻に考える人もいますが、真夏に太陽が降り注いでいる時に最も必要とするものですから、これこそ太陽光発電でエアコンを回せばいいのではと思っています。そういう意味では、昼間に使われて冷房が主にエネルギーを消費するオフィスなどは、太陽光発電を利用するのに非常に適しています。
「ゼロエネルギー」で忘れてはいけないもの
再生可能エネルギーの関心が高まる中で、「ゼロエネルギーハウス」という言葉も登場してきました。太陽光発電や薪ストーブに代表される再生可能エネルギーをフルに活用した、省エネハウスの進化形という認識が一般的だと思いますが、厳密にいえば別物です。たしかに現在のゼロエネルギーハウスには、ちゃんと断熱・気密といった省エネ技術が採用されています。これは、再生可能エネルギーの設備が現状では非常に高価なために、まずは建物で省エネした方が安価で合理的だという考え方です。しかし今後、再生可能エネルギーの低価格化が実現すれば、再生可能エネルギーと省エネ技術のどちらかだけを選択するケースが増えることが予想されます。今のゼロエネルギーハウスの多くは高価な実験住宅なので予算は潤沢ですが、多くの人が実際に買うマイホームにおいては、資金は無尽蔵ではないからです。
家はエネルギーをつくって光熱費を浮かせるために建っているのではなく、エネルギーを効率よく使って、生活の質を上げることを目的とすべきなのです。ゼロエネに血眼になる発想の怖いところは、家づくりの追求ではなく、太陽光発電などの再生可能エネルギーの効率の追求にすり替わってしまうことです。そうなると家の議論ではなくなってしまいます。少なくとも、建物のつくりを疎かにするような方向には絶対に進んではいけないと考えています。
設計で一番初めに考えるべきこと

学生の熱心な積極参加が研究室のモットー。
どのような家を建てようと、その敷地に入ってくる太陽エネルギーの量は変わりません。従って、敷地に降り注ぐ太陽エネルギーを建物でどうやって受けるかを考えることがエコハウス設計の要です。
設計を考える上では、日射のこと、風のこと、光のこと、さらに周辺の景色のことまで様々な条件を考慮しなければいけません。設計の途中で、シミュレーションを行い、エネルギー効率を検証する方法もありますが、シミュレーションの結果を見て、もう一度ゼロから設計をやり直すということはあまり現実的ではない。
せいぜい、微調整をして、最後は設備でつじつまを合わせるということになります。だからエコハウスを設計するには、ラフスケッチの段階から自然エネルギー取得の方法を考えないといけません。その際にどのような優先順位で考えるかと言えば、基本はやはり太陽です。風を最優先で決めたがる設計者もいますが、まず太陽で決めるべきです。なぜなら、太陽の動き方は決まっていて人間都合では絶対に変えられない。さらに、日射は絶対曲がってくれません。太陽が当たらない場所へ、後から太陽があたるようにすることはできません。だから、まずは屋根、次に壁。建物の各部位で太陽をいかに取り入れ、いかに防ぐか。これを最優先で考えるべきです。まさに、太陽を中心とした「地動説」が基本なのです。
それに対して、風は必ずしも一定方向から吹くわけではありません。それに周辺の障害物にあたると簡単に曲がります。風はいろいろな方向から来ることを想定し、柔軟に取り込むことを考えないといけません。壁にあたる太陽や風を取り入れるインターフェースが「窓」。窓には、光をいれる、風を入れる・抜く、景色を見るといったたくさんの機能があります。それぞれの窓ごとに、目的を明確に して丁寧に設計することが大切です。このようにエコハウスを実現する上では、まず、敷地、気候の中から最適を考えることが大切で、これがエコハウスの設計です。
OMソーラーへの期待
太陽熱が住宅におけるエネルギーの利用方法としてとても理にかなっていることは前述した通りですが、まだまだ日本では普及が足りません。今や中国は、太陽光パネルの製造・販売で世界のトップですが、つくったパネルの95%は海外への輸出です。国内においては圧倒的に太陽熱利用が普及しています。つまりグローバルビジネスとしては太陽光発電に取り組み、普及のために税金を投入している国へ販売する。国内のエネルギー供給は効率の良い太陽熱で済ませているわけです。賢いですよね(笑)。日本でも国内のエネルギー自給を考えるのであれば、もっと太陽熱の有効利用を考えるべきです。最近ではOMソーラーを真似したような空気式の熱利用も見かけるようになりましたが、見よう見まねのものは失敗が多いですね。それだけ空気を扱うというのは難しいことです。エアコンを床下に入れるような事例も見かけますが、だいたい上手くいっていません。ノウハウがないなら、普通に床の上でエアコンを使った方が合理的(笑)。床下を活用した空気循環は、なんといってもOMソーラーがダントツの実績があるわけで、そうそう真似できるものではありません。
OMソーラーは、太陽熱と空気循環を高次元で融合させた技術を長い歴史と実績で育ててきた、太陽熱利用のリーディングカンパニーです。太陽熱を日本に普及させるために、OMソーラーには頑張って欲しいと思っています。太陽熱にまじめに取り組んでいる国内唯一の企業といってよいのですから。
その上で、OMソーラーに対する要望としては、現在のOMソーラーの形を普及させることも大事ですが、もっと幅広い取り組みを期待します。現在取り組まれているOMソーラーと太陽光発電のハイブリッドもいいですね。空気式は水式よりも太陽光発電とは相性がいいですから。でも、空気式だけではなく、水式の検討や、小型化、シンプルな機能の軽装備の方向も目指して欲しいところです。
そのためにも、現在、私たちも協力して取り組んでいるモデルハウスや実験棟の検証結果も踏まえていただいて、OMソーラーの持つポテンシャルを正確に把握した上で、用途を拡大して欲しいと思っています。
単なる省エネではない空間の質、生活の質をベースに考えているところがOMソーラーの魅力です。私たちも協力していきますので、これからの取り組みに大いに期待しています。
第二部 OMソーラーの家を評価する
独立行政法人建築研究所 桑沢保夫×赤嶺嘉彦
第一部では主に「エコハウス」をキーワードにお話を伺いましたが、第二部では独立行政法人建築研究所で、「自立循環型住宅」という主にパッシブ技術を中心とした評価指標の構築に携わられ、この評価指標におけるOMソーラーの家の実測を担当された桑沢保夫氏と赤嶺嘉彦氏のお二人に「OMソーラー」について語っていただきました。
OMソーラーの家を徹底的に実測

T邸外観。詳細の実測を行ったOMソーラーの家。
—今回、愛知県にあるOMソーラーの家、T邸(「空気集熱式ソーラーシステムの省エネルギー効果の評価に関する研究」での実測物件)についてかなり詳細の実測を行っていただきましたが、まずは実測することになった経緯についてお聞かせください。
桑沢:私たちには一般に使われている技術について公平に評価するという役割りがあります。ただ、OMソーラーやダイレクトゲインといったパッシブ技術を定量的に評価するのは難しくて、これまでなかったのが実情です。その一方で、自然エネルギーの有効活用については社会的な要求も高まっているのも事実で、自然エネルギー(パッシブ)技術でどれだけやれるのかということに関しては大きな期待も抱いていました。そういう意味では今回は良い機会をいただいたと思っています。
—「自立循環型住宅」という指標が工務店の中でかなり浸透してきましたが、普通の人がわかる言葉でいうとどう説明したらいいでしょうか?
桑沢:ここで対象にしている技術にはそれほど難しい技術はありません。しかし、これらの技術がどの程度効果があるのかということになると良く分かっていませんでした。だったら、効果を数値化して示してあげれば、より取り組みやすくなるのではないか、というのが自立循環型住宅の考え方です。

独立行政法人 建築研究所 環境研究グループ上席研究員 博士(工学) 桑沢保夫氏。
—例えば日射や通風の効果、日射遮蔽の効果など、身近な技術による効果をあらためて数値化することで、評価の対象にしようということですね。
桑沢:そうです。ハウスメーカーなどは自前で開発する力や独自の考え方を持っていますが、地域の工務店にはありません。そして、現状ではこれらの簡単な技術ですら利用されないでいることが分かってきました。これら簡単で基礎的な技術を再評価することで、住宅の性能がレベルアップしていくことに繋がるのではないかというのが狙いです。
—とくに地域工務店に向けた指標ということですね。これまでこのような指標や解説書はあったんでしょうか。
桑沢:これまでは省エネ基準、性能評価など、法律をベースとしたレベルを維持していくためのガイドというのが一般的でしたが、性能アップのための技術やそれらを数値化して示しているもの、そして、つくる側の視点に立って包括的にまとめられているという点では、全く新しいものだと思います。
—OMソーラーもT邸の実測を経て自立循環型住宅の中で評価されることになったわけですが、実測の内容はどんなものだったのか教えてください。
赤嶺:温熱環境、集熱状況、給湯関係、電力など合わせて70点ほどでしょうか。それを5秒間隔で取っていましたから、一般的な実測よりもかなり詳細なデータといえると思います。OMソーラーの性能についてはこれまでも論文などで出ているんですが、温熱環境についての考察が主でエネルギーがどれだけ集められているかについてはあまり見当たりませんでした。今回はそこをきちんと押さえておきたかったというのがありました。ですから、70点のうち、40点くらいがOM独自の計測点だったと思います。
本当の快適性を評価するのは難しい

T邸の温度状況の推移(1/21から23)。晴天で集熱量を十分に確保できている1月21日と22日は、10時頃の集熱開始と共にリビングの室温と床面の温度が上昇し、昼過ぎには20℃を上回っている。集熱終了後は、蓄熱部に蓄えられた熱の効果により、室温の低下を抑え、補助暖房を使用せずに深夜0時で18℃前後、最も室温が下がる朝方においても15℃前後に保たれている。また、床温度が室温よりも約1℃高く保たれていることも特徴として挙げられる。1月22日は曇天で、集熱量は晴天日よりも少なくなるが、前日までの蓄熱の効果により、深夜・朝方の室温は、それぞれ18℃・15℃前後に保たれている。
—実測を終えての印象はいかがだったでしょうか。
赤嶺:率直な感想としては、非常に上手く温かいというか寒くない環境を保たれているなと思いましたね。室温が14℃というデータもありましたが、そのときの外気温は0℃でしたし、これだけの温度差を暖房なしで維持しているのは素晴らしいなと思いましたね。
—一般的な家、例えば次世代省エネ基準の家では外気温0℃の場合、暖房なしだとどの程度の室温になるんでしょうか。
赤嶺:7~8℃程度、確か10℃は切っていたと思います。
桑沢:蓄熱が効いているということですね。
—一方で、「14℃では寒いだろう」、「いや十分では」という議論もありましたよね。
桑沢:そこは難しい問題ですよね。居住者の生活スタイルにもよりますし。ただ、14℃では寒いという方が多いんじゃないでしょうか。多くの場合、室温は20℃というのが一つの指標になっています。省エネ的なライフスタイルであれば18℃に下げる場合もありますが、平均的にいえばそのあたりが下限なんだと思います。ただ、だからといって皆が皆、20℃である必要はないわけで、Tさんの場合は14℃を許容されていたということですよね。
—実測結果によると、床の表面温度が室温よりも高い温度を示しているわけですが、その輻射的な効果というのはどのように捉えたらいいでしょうか。
赤嶺:床が冷たくないというのは大きなメリットだと思います。一般の家ではリビングは暖房していても他の部屋はしていない分、壁が冷たくて体感的には室温以下に感じることがあります。それに比べOMソーラーの場合は床や隣の部屋など、家全体が温かい分、体感的には良くなると思います。ただ、どのくらい良いのかということになると難しいところです。
桑沢:出来上がった温熱環境をどう評価するかは実際に議論が始まっていて、床暖房の場合はプラス評価する必要があるのではないか、逆にエアコンの効果(気流)や吹き抜けがある場合などはマイナス評価が必要ではないかなど、出来上がった温熱環境から暖冷房の負荷を検討しなくちゃいけないだろうということは今まさにやろうとしているところです。
赤嶺:自立循環のガイドをよく見ていくと、温熱環境にとって良いことが必ずしも他の快適性を高めないことがあります。例えば、大きな窓や吹き抜けは暖房負荷としてはマイナスでも冷房負荷ではプラスに働いたり、視覚的な効果(開放感)としてもプラスになることもあります。工務店の皆さんには、それぞれの要素がトレードオフの関係であることも数値を通して理解していただければいいと思います。
OMソーラーには評価し切れない良さがある

独立行政法人 建築研究所 環境研究グループ研究員 博士(工学) 赤嶺嘉彦氏。
—「エコハウス」と言いながら間違ったことを提案しているのはまずいですからね。
赤嶺:内容がどうかというよりも、テレビや雑誌などでの取り上げられ方次第で、間違った認識を消費者に与えてしまう危険性はありますよね。
—ガイドの中では住まい手のライフスタイルを分けて想定していましたよね。
桑沢:「自然生活志向」「設備生活志向」などですが、住まい手それぞれの志向に合った住宅があるはずで、OMソーラーの場合だとおそらく自然生活志向の方が多いんだと思います。そうすると、朝、少し寒いときどう考えるかが一つのポイントになります。住まい手が一枚多く着て過ごす生活スタイルであれば、OMソーラーの家の性能をフルに発揮することになるわけです。逆にいえば、住まい手の生活スタイルが分かっていれば、それに合った住宅を提供できるということになります。このマッチングがないと、折角性能の高い住宅が完成しても、エネルギーを多消費してしまうことにもなりかねないのです。
—そこがとても重要ですよね。
桑沢:自立循環の評価では、人が居る間は常に20℃に保ちなさいということが基準になっていますから、OMの家も20℃にしなきゃいけなくなるわけです。そこが省エネ性という面で不利な方向にカウントされていることも確かです。
—それと共に、OMは太陽熱を取り入れる技術ですから、取り入れによりカバーしている部分をどう評価できるかということが残されている気がします。
赤嶺:そうですね。例えば朝16℃だったとしても太陽熱の取得で室温が上がるなら、一枚多く着て過ごせば、暖房設備(エネルギー)を使わなくてよくなります。また、太陽熱の集熱前に暖房設備を使うと、有効に使える太陽熱が減ってしまうことがあります(上図)。現状では、20℃設定で暖房設備を使うことを前提にしていますので、太陽熱のポテンシャルを100%活かした評価とは言えないのが実情です。ライフスタイルと共に検討しなければいけませんね。
—OMソーラーの家の住まい手の満足度、あるいは実際の性能と第三者による評価の間にはまだ計り切れない空白部分がありそうですね。OMソーラーの家を住まい手も含めた評価ができるようになれば、よりOMの評価が上がる可能性を感じます。
桑沢:そうですね。私はそういう評価があっていいと思います。全ての条件を書き込むのは無理かもしれませんが、計算プログラムの中では条件毎に比較できるようなしくみはあっていいように思います。ただ、それが基準になるかといえばかなりハードルは高いと思いますが、自立循環のレベルであれば可能性はあると思います。冒頭で住まい手の志向に触れているわけですから、結果にもそれを反映できればいいですよね。
—そういう意味では、「OMスマートネット」による実際の効果と今回のような第三者による評価の両輪があることに大きな意味があるのだと思います。今日はOMの評価を伺うと共に、今後の評価においてもさらなるOMの可能性を感じることができました。ありがとうございました。

















